住宅ローンの保証人、遺産相続、自動車購入などで急遽「実印」が必要になった場合、旦那の「実印」を妻が登録して使うことはできるのでしょうか?
また、苗字だけの実印(旦那登録済み)なら登録手続きをしていない妻でも使うことができるのでしょうか?
もし仮に使うことができれば出費や手間を省くことができますので、使えるものなら使いたいものです。
今回は夫婦(家族)で同じ「実印」を使うことができるのか解説したいと思います。
夫婦(家族)で同じハンコを実印として使うことはできない
夫婦(家族)で同じハンコを実印として使うことはできません。
実印として登録できる印鑑は1人一個までなっており、意思の同一性を図るため家族であっても共有できない決まりとなっています。
これは各自治体のホームページにも記載されています。
-
実印とは?必要になる前に知っておきたい基礎知識!
「実印とは?」と聞かれてすぐに答えられる方は多くはないでしょう。 実印は印鑑であることには間違いありませんが、単なる印鑑ではなく重要な役割を持っています。 自分には関係ないと思われがちですが、このさき ...
続きを見る
実際に窓口で職員に聞いたところ、
印鑑登録をする際は同一世帯の印影と照合するらしく、その印影と合致しなければ実印として登録できるらしいのです。
ですから苗字だけの実印で紛らわしいモノは弾かれる場合もあるそうです。
そもそも実印は「この印鑑は本人のモノである証拠、自らの意思で決定している」という意味を持ちます。
「なりすまし」などの悪用を防止するために実印があるわけで、夫婦(家族)で共有することができたとしたら実印としての効力は皆無と言えますよね。
夫婦間で了承を得ていたとしても、印鑑条例に則(のっと)ると「実印の共有はできない」という決まりになっているのです。
苗字だけの実印は妻(家族)でも使えるのか?
「苗字だけの実印なら旦那(家族)の実印を使ってもいいのでは?」とお考えの方もいるかと思います。
仮に実印を押せたとしても印鑑証明書の提出を求められるので使えません。
「印鑑証明書」は実印とセットで扱われるもので、実印が押された書類に添付するのが一般的です。
印鑑証明書には登録した印鑑の印影から住所、氏名、生年月日などの個人情報が記載されており、本人の実印であることを証明するものです。
-
印鑑証明書とは?知っておきたい基礎知識と作り方について
「印鑑証明書」とは押印した印鑑が間違いなく本人であることを証明するもので、契約証書作成や不動産登記などの手続きで重要な書類として扱われます。 実際、自動車や一軒家、マンションを購入する際、印鑑証明書の ...
続きを見る
仮に妻が旦那の実印を使ったとします。
個人の実印にはその個人の印鑑証明書しか発行されません。
今回なら旦那個人の印鑑証明書しか手に入らないわけで、印鑑証明書の提出を求められても妻個人の印鑑証明書は用意できないわけです。
冒頭で解説した通り、夫婦で同じハンコを実印登録することはできません。
個人(妻)には個人(妻)の「実印」と「印鑑証明書」を用意する必要があるのです。
実印を必要とするシーンには印鑑証明書が必ず必要になるため、たとえ苗字だけのハンコであっても旦那の実印を妻(家族)が使うことはできないわけです。
実印は夫婦(家族)別々に作るべき理由
さっきと言っていることが矛盾してしまいますが、夫婦で同じハンコを実印として使えてしまっているのも現状です。
というのも印鑑条例は各自治体によって異なり、「共有できない」と明確な記載がないところもあります。
ですが、夫婦(家族)で実印を共有している場合、以下の危険性があります。
実印共有の危険性
- 実印を勝手に使われる
- 複製により悪用される
実印を勝手に使われる
実印を共有していた場合、相手に勝手に使われる可能性が出てきます。
たとえ夫婦と言えでも、全ての方がお互いを信用しているとは言い難いです。
例えば勝手に実印と印鑑証明書を持ち出され、本人の知らないところで借金の連帯保証人にさせられるなんてことも実際にあるようです。
印鑑証明書は基本的に本人が申請しなければなりませんが、印鑑登録カードと委任状があれば代理人でも簡単に入手することができるのです。
つまり実印を共有していることで、相手の「実印」と「印鑑証明書」を用意することは可能と言えば可能なのです。
もちろんすべての夫婦に言えることではありませんが、実印を共有することはこうしたリスクもあるということを覚えておいてください。
複製や偽造により悪用される
あくまでも可能性の問題ですが苗字のみの実印だと、第三者によって複製、偽造により悪用される可能性があります。
そもそも実印は複製や偽造を少しでも防止するためフルネームで彫るのが一般的です。
苗字のみの実印だとある程度絞られてきますし、書体に関しても素人から見れば似たり寄ったりで、複製や偽造されやすい環境であることには間違いないです。
過去に某大手住宅メーカーが地面師によって大金を騙し取られた事件がありましたが、
これも本人の知らない所で実印と印鑑証明書を偽造され悪用されたのも原因のひとつとなっています。
この事件に限らず複製や偽造による被害があるのは事実です。
夫婦共有で苗字のみの実印を使うのではなく、「フルネーム」や「ファーストネーム」の実印を夫婦別々に作ることが賢い選択と言えます。
今回のおさらい
実印は夫婦で共有できる?
- 実印は共有できない
- 登録した本人だけが使える
- 夫婦別々に作るべき
実印の詳しい作成方法はこちら初めての実印作成!完成までに押さえておきたい4つのポイントを参考にしてみて下さい。
-
初めての実印作成!完成までに押さえておきたい4つのポイント
自動車や不動産の売買、住宅ローン、遺産相続など実印を必要とする機会は必ず訪れます。 慌てて作ってしまったがために「役所で登録ができなかった」なんてことにもなりかねません。 この記事では、はじめて「実印 ...
続きを見る